2016年の賃上げ実施企業数は8割も、中小企業の昇給は正社員58%、非正規雇用のパートはわずか17%
東京商工リサーチは全国の企業を対象に、2016年の賃上げ状況に関するアンケート調査を実施し、その結果を6月29日に発表した。
調査期間は5月26日から6月9日で8,097社からの有効回答。
今年度の賃上げ状況を調べたところ、賃上げを実施したのは6,483社で全体の80.0%を占めた。
賃上げの実施方法は「定期昇給のみ」が2,998社(構成比37.0%)で最も多く、「定期昇給と賞与・一時金の増額」の907社(同11.2%)、「ベースアップのみ」の824社(同10.1%)、「定期昇給とベースアップ」の597社(同7.4%)、「賞与・一時金の増額」の539社(同6.7%)が続いた。
アベノミクスで非正規労働者の割合は4割を超えたが、非正規雇用の賃金上昇率は僅かと言っていいだろう。
大企業は2%超の賃金アップ率も前年を下回る
2016年、東証1部上場の従業員500人以上の主要21業種251社の大手企業の定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ額は月7497円。
賃上げ率は2.27%となったが中国経済減速や年初からの円高・株安の影響で経営者が慎重姿勢を強めたのでベースアップ額は4年ぶりの前年割れとなった。
中小企業や非正規労働者の経済格差は広がっている
賃上げ格差は雇用形態の違いでも生じている。
株式会社エフアンドエムは、同社が運営するサービスを利用する中小企業909社を対象に、2016年度の昇給予定について実態調査を実施した。(※調査期間は1月1日から3月11日にかけて)
それによると中小企業の58%が正社員に対して「昇給の予定がある」と回答したのに対し、非正規雇用のパートタイマーに対して「昇給の予定がある」と回答したのは僅か17%にとどまった。
日銀の異次元金融緩和によるアベノミクスで正社員の比率が僅かに回復したが(今まで15年以上だだ下がりしていた比率が少し戻しただけ)
失業率の低下や雇用数の増加の大半が非正規雇用の増加だと言われている。
昨年の4月には改正されたパートタイム労働法が施行され、正社員とパートタイマーの間で職務内容と人材活用の仕組みが正社員と同一なら賃金格差や差別的な取り扱いが禁止されたはずだがその効果はでているのだろうか?
実質賃金は4年連続マイナス
目下、日本の賃金ベースは4年連続のマイナスである。
足元では原油価格の下落・円高によるデフレ要因のおかげで、賃金の名目の伸びから物価上昇分を除いた実質賃金は前年同月比0.2%増と4カ月連続で増えているが、年単位で見るとこれまで4年連続のマイナス。
給料が上がってもインフレや税金の負担増に収入が追い付ていないので、実質賃金ベースではほとんど所得が増えていないどころかマイナスである。
アベノミクスで格差拡大
2016年度がどうなるかまだ分からないが、このまま中国の景気急減速、欧州の移民問題拡大、イギリスのEU離脱による世界経済の混乱に拍車が掛かれば、日本の景気動向もどうなるかわからない。
為替レートは2016年7月時点でドル円1㌦101円前後と、日銀黒田の異次元金融緩和(笑)状態。
日本は25年近く景気が悪化すると給料低下→好景気になっても給料横ばいで、生産効率は1.2倍程度になっているのに賃金水準は100~98と微減している。
円安になっても結局輸出企業は国内に生産拠点を戻さないし、儲けた巨額の利益を労働者に還元するきもない。パナマのタックスヘイブン利用による合法的な節税には熱心だが、国内の70%を占める労働者への還元には儲けが減るからか熱心ではないようだ。
一部の正社員に限定して賃上げするなど見せかけだけのアリバイ工作をしているが、中小企業に対しても同じように投資しなければ、人材の育成や賃上げによる消費の拡大が起きないので意味がない。
アベノミクス開始から3~4年が経過しようとしているが、予想通りの展開である。
アメリカは2009年のリーマンショック後、QE緩和政策により約7年間でV字回復。
国内外で様々な問題を抱えてはいるがアメリカはこの7年間で失業率は10%→4.7%まで低減、物価や給与所得もインフレ率と同等に上昇。
それに引きかえ日本は3年経ってもほとんど成果なし。
このまま欧州や中国経済起因で世界的な金融危機が再来した場合の、この国の状態を考えると、やはり今後15~30年間の日本の将来像はすでに確定しているように思えてしまいます。